平成13（2001）年、縁あってさぬき市民病院に赴任しました。平成16年には志度の地に居を構え、その時から旧大川郡（現在のさぬき市と東かがわ市）に住む唯一の精神科医になりました。ずいぶん過疎地のようですが、本当にそうなのです。

　時代の波にさらされ、さぬき市民病院は精神科病棟を閉鎖することになり、転勤か独立かの選択を迫られることになったのですが、ある日この地で開業することを思い立ちました。それまで開業を具体的に考えたことはなく、ふと天啓のようにひらめいたのです。

　平成20年冬、志度駅近くの候補地を選定する作業に入っていましたが、地主さんが快く同意してくださり、最終的に今の場所に決まりました。車で来やすく、公共交通機関を使っての来院も可能な場所でした。場所の選定にこだわったのには訳があります。精神科心療内科の敷居は高く、それまでの病院勤めでも痛感していましたから、入りやすくて気兼ねなく来れるクリニックにしたいと思っていました。多くの患者さんの役に立ちたい、そのために少しでも受診の際の障壁をなくしたいという思いが強かったのです。

　クリニックの設計施工は積水ハウスにお願いしました。緑が多く、光あふれるクリニックを希望しました。また、待合室で待つ人の視線が交らないという希望も出しました。設計を担当してくれたのは、東京本社の吉田敏明さんでした。それまでにクリニックの設計を数多く手掛けてきたベテランの建築士です。

　最初の相談から２週間して設計図の第１稿が上がってきた時にはびっくりしました。２８０坪の土地に絶妙に配置された建物、随所に工夫が光る合理的な間取りと瀟洒な外観のデザイン。真っ白だったキャンバスは素晴らしい絵で埋めつくされていました。細かい打ち合わせを繰り返し、最終案に調印して、平成20年8月に着工し12月に竣工しました。

　クリニックの立地、建物の快適さとデザインに大変満足しています。受診される患者さんや家族の皆さんはいかがでしょうか。クリニックの立ち上げに関わってくれた皆さんには大変感謝しています。